南半球限界大学生ブログ

謎のモチベが湧いた時に書いてます

オーストラリアでの大学受験、ATARとスケーリングについてなど

 

オーストラリアの大学受験について書いていこうと思う。

高校卒業後の進路は人によると思うが、オーストラリアでオーストラリア国内にある大学への進学を目指す場合は、自分が在住している州の統一試験を受ける。

そして1月上旬くらいに公開される、最終結果となる自分のATARのスコアを元に進学する大学と学部を決める事になると思う。

 

 

 

ATARについて:

ATARというのはAustralian Tertiary Admissions Rank(オーストラリア高等教育入学ランク)の略だ。

スコアは最高で99.95、最低で0.00になるが一定の数を下回るスコアを獲得した場合は○○(一定のスコア値)以下という結果しか通告されない仕組みになっていた気がする。

 

このスコアが何を示すのかというと、オーストラリア国内で共に同じ試験を受けた学生の中で自分の順位だ。99.95というスコアを得た場合には上位0.05%の位置にいる事になり、70.00なら上位30%のランキング位置にいるという認識で良い。

100から自分のスコアを引いた値の上位にいる、もしくはそのスコアのパーセンテージ分だけの人数が自分の下にいる事になる。

 

ATARのRがRankであり、自分がオーストラリア内でどのランク、または順位にいるのかが分かる。日本とは違いこちらは統一試験のため、大学ごとに入試を受ける必要がない。よって、州で受けた統一試験の順位で入れる学部と大学が決まってくる。

仮に100点満点の試験で60点しか取れなかったとしても、自分以外の生徒が全員60よりも低い点数ならATARでは99.95という結果になる。全学生が同じ試験を受けるため、周りとの競争や個人の比較がかなりしやすい仕組みだ。

 

一つ注意して欲しいのは、ATARはオーストラリア全体でのランキングになるが、受験の時に受ける統一試験は州ごとに異なる事だ。ヴィクトリア州ならVCE(Victorian Certificate of Education)、NSW州ならHSC(Higher School Certificate)のようになる。

どうせならすべての州で同じ試験にした方が楽だとは思うが、おそらく様々な事情*で現段階ではまだ州ごとに違う試験になっているのだと思う。

*地域ごとの学生数の差や、地域の経済/教育格差など

 

といっても、試験が開催される期間や時期はほぼ同じであり、試験の難易度も大きくは変わらないので、どの州で試験を受けるとしても要求される勉強量や学習内容は変わらない。

 

スケーリングについて

オーストラリアではスケーリング(Scaling)というスコアの調整が最終スコアを出す前に行われる。

 

これは簡単に言うと成績が良い集団の中で取った1位と、成績が良くない集団の中で獲得した1位は同等ではなく、それらを区別するために前者にはスコアを加算し、後者からはスコアを引いて調整するといった仕組みだ。

基本どの年も理数系科目は加算されやすく、体育や芸術系、心理学といった科目が減算される傾向にあった。

 

オーストラリアの大学受験ではまず受けた科目のスコアが出され(このスコアも試験の正答率ではなく同じ科目の試験を受けた学生内での順位を示すものである)、4~6科目のスコアの合計でATARの最終スコアが算出される。

どの州で大学受験をするにしろ、英語(留学生等にとってはESL)以外の科目はどの生徒も50は越える膨大な選択科目の中から自由に選ぶ事ができる。

 

この全科目に対してスケーリングは行われるが、科目以外の要素でもスケーリングが与えられる。スケーリングが与えられる要素を知っている範囲でまとめると、

 

ー科目(受験者数が少ない理数系科目が加算される事が多い)
ー障害や病気
ー親や家庭の経済状況(貧富の差)
ー住んでいる地域(地域格差
ー英語への慣れ(言語的なアドバンテージの有無)

 

この5つである。もしかすると他にもあるかもしれないが、その辺りは毎年受験を管理している団体(Vic州ならVCAAやVTAC)が早い段階からホームページに記載すると思うので自分が受ける年に確認すると良い。

一つ一つに対するスケーリングを自分が認識する範囲でまとめると、

 

科目:

基本的に理数科目は加算される。その科目を受けた生徒が他の科目でも良い成績を残している傾向にある場合には、前述の例えの「成績が良い集団でとった順位」とされ、集団が返金として他の科目でもより高い成績を残している程、加算される点数が増える。

自分は日本語を第一言語として受験しており、自分の年は他の生徒のパフォーマンスが全体的に良かったのか+1点の加算をされた。しかし、その前の年は-2~3点の減算をされていたようなので、科目ごとにこの辺りは毎年変動がある。

 

芸術や心理学、体育は毎年下がりやすい傾向にあったが、こちらも加算または減算される点数の度合いはその年によって異なる。

 

障害や病気:

度合いにもよるが学習難易度を上げているとみなされると加算される。

医者や病院から発行してもらった公的な証明の提出が必要。

 

親の家庭、経済状況:

学習環境や貧富の差を解消するためのスケーリングだ。

一定以下の年収、収入の家庭だと加算対象になりやすい。

世帯年収を示す書類(税金や会社からの給与証明等)が必要。

 

地域:

田舎と都会の学習環境の差を考慮したスケーリング。

田舎の学校で学習や受験をすると加算対象になる。

生徒本人が住んでいる住所と学校の所在地の提出が必要。

 

英語への慣れ:

オーストラリアは留学生は難民も数多く、英語のネイティブもいれば受験の1年前に初めて英語圏の国に来た生徒もいる。オーストラリアの滞在歴、親や家庭で使う言語等の事情を鑑みて、言語的に不利な立場にいると加算されやすい。

生徒のそれまでの学校や国の滞在歴みたいなものが必要。
上記の書類と比較して一番手に入れるのが面倒くさかった。(自分でそれまで通った学校に連絡を取り、証明を発行してもらい、それらを豪州内の正式な翻訳家の人に翻訳してもらい、提出する。)

 

といった具合になる。頻繁にアップデートされているので再度言うが自分が受ける年にちゃんと確認するのをおすすめする。

 

このスケーリングは州に対しても適応されている。
オーストラリアの中でも都市化や発展が進んでおり、人口や移民も多いVIC州やNSW州は競争率が激しいとされ加算されやすい。(学生数も多いため)

 

逆に、競争(人口)が他の州に比べて穏やな州だと同じ成績を取っていてもVIC州やNSW州の生徒よりもやや減算される傾向にある。

どの州で受験をしようと学習内容や入試の難易度に大きな変化はないが、スケーリングによる影響は州ごとに多少あるという認識で良いだろう。

 

といっても、多くの生徒は科目ごとのスケーリング以外を大きく考慮する必要はない。

 

科目以外のこれらの要素に自分が該当する心当たりがある場合は、そのスケーリングを受けるために提出しなければいけない書類や証明、手続きが必要になる。州の受験管理をしている機関のホームページや、学校の受験を担当しているコーディネーターの先生にきちんと聞くと良い。

 

色々な格差に対する考慮や不公平を解消しフェアにしようとするための仕組みが多く行われている国なので利用できる制度はきちんと利用するのがおすすめだ。

 

 

科目に対するスケーリングはどの州にいてもそこそこ大きく受ける。

自分が受験する科目に対するスケーリングがどの程度なのかを事前に調べておく事と、受験の科目選択をする時も大きなこだわりがないなら加算されやすい科目を取ると高いスコアを取るにあたって有利になる。

 

もちろん加算の度合いが大きい科目程、難易度がそれだけ高いともとれるので、その辺りは自分の適性や興味、得意不得意を見て決めると良い。

減算される科目を取ったとしても、仮に40をとって2減算されれば最終スコアは38で、加算される科目でも20しかとれなければ加算されたところで21~26になるので前者の方が圧倒的に良い成績である(VCEでは科目ごとの最高スコアは50)。

 

スコアとして反映される受験科目は必須の英語を含めて最低4教科、最高6教科までなのでどの生徒も英語とそれ以外の3教科は必要になる。6教科以上も試験を受ける事自体は可能だが7教科目からは成績に反映されないので意味がない。英語とそれ以外の成績が高い3教科の成績は100%がATARのスコアを換算される時に利用され、それ以外の1~2教科は10%がカウントされる。

 

例えば、英語とそれ以外の3つの受験科目が同じ生徒が2人おり、二人ともその4教科で同じ成績を残したとする。この時の2人の4教科のATARが共に90だとし、この内の一人は5科目を受験しておりその科目のスコアが30とする。

すると、30の10%である3が90に加算され、5科目で受験した生徒の最終スコアは93となる。6科目を受験していればそこにさらに6科目のスコアの10%が加算される。

 

100%加算される科目は英語以外は成績の高い順から換算されていくため成績の良くなかった1~2科目が10%加算になるので成績のより悪い科目が100%加算対象になる心配はしなくて良い。

 

 

終わりに

以上の内容をある程度理解すればオーストラリアで受験するのに大きな障害はないと思う。オーストラリアは統一試験なので大学ごとに対策をする必要はなく、またかなりありがたい事に過去の受験問題が全科目ネットで公式サイトから無料公開されている。

それらを利用して十分に対策すると良い。私が受験したのは2015年くらいだったのでもう4~5年も前の話だが、大きな流れはまだ変わってない筈なので誰かの参考になれば幸いだ。

 

P.S 

私個人のアドバイスとして、英語は成績が他科目と比較して良くも悪くも必ず100%加算になるためきちんとやった方が良い。英語だけは捨て科目にするのはNGである。

どの大学のどの学部であろうが英語は必ず一定のスコア以上を要求されるので希望する学部のスコアをちゃんと確認しよう。(医療系は言わずとも、理数系科目にも一定の要求スコアがあるので大学のサイトで事前に確認すると良い。大学名+コース名+ATARでググれば出てくる。)